「THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法」をベトナムの会社で導入
Eco Parkから会社のある工業団地まで自分で車を運転して通勤しているが、通勤中ヒマなのでAudibleを聞くことにした。
オレは活字を読む派だ。音声や動画は合わん。と思っていたがなかなか良い。
良い点は読むべき本と、読まなくても良い本がわかることだ。活字にすると内容のないことでももっともらしく感じるときがあるが、音声で聞いているとバカっぽく聞こえることがある。今まで発見できたのは
・内容のないもの
・本のほとんどが「こういう会社はバカだ」という内容に使われていつまでたっても解決策がでてこないもの。
中にはKindle版をお金出して買ってしまっていて、積読していたものもある。Kindleで買う前にAudibleの会員で聞き放題のものがあれば、それで買う価値がある本か確認できるところが良い。
そんな中でも、THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法は大変良い。タイトルが安っぽいノウハウ本だが内容はすごく良い。本も何度も読んでいて、読めば読むほど気づきのある本だが、Audibleで2.5倍速で何度も聞いていると、読んでいるのとは違う気づきがある。
ベトナムの会社でチームワークとかコミュニケーションとかが悪く、主体性もないのが気になっていて、自分の権限の範囲でちょっとずつ取り組んでいたが、今年から自分が引き継いだことでいろいろなことを取り組んでいる。そこで最も参考にしたのがこの本だったので、内容をよく理解しているつもりだったが全然理解していないことに気づかされた。今朝も何周目かのAudibleを聞きながら通勤してきたが、新しい気づきがあった。
ベトナム人は権威に対して従順なため、裸の王様になりやすく、これがベトナムで仕事をしていて最も大きいリスクだと思う。リーダーが間違っていても誰も何もいわず、淡々と時にはズルをしたりなまけたりしながらついてくる。これは度々変わる政府方針や税務監査、コロナ、停電よりも恐ろしいリスクだと思うので、私の言うことに従うのではなく、主体性を持てるチームに変えていくための取り組みに参考にしている。
THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法によると、
大きな成功を収めているチームには下記のようなものがある
Navy Seals
KIPP CharterSchool
Uplight Citizens
IDEO
それらの特有のパターンとしてあげられるもの
・お互いの物理的な距離が近い。よく輪になっている
・アイコンタクトが多い・握手、グータッチ、ハグなど肉体的な接触がある・活気のある短い言葉のやりとりが多い(誰かの長いスピーチではない)
・チーム内の交流が盛ん。仲のいい小さなグループで固まらず、誰もがメンバー全員と会話する
・人の話をさえぎらない
・質問をたくさんする
・人の話を熱心に聞く
・ユーモアと笑いがある
・「ありがとう」と言う(ドアを開けてあげるなど、ちょっとした礼儀や親切を忘れない)
チームのパフォーマンスは、5つの計測可能な要素の影響を受ける。
1. チームの全員が話し、話す量もほぼ同じで、それぞれの1回の発言は短い
2. メンバー間のアイコンタクトが盛んで、会話や伝え方にエネルギーが感じられる
3. リーダーだけに話すのではなく、メンバー同士で直接コミュニケーションを取る
4. メンバー間で個人的な雑談がある
5. メンバーが定期的にチームを離れ、外の環境に触れ、戻ってきたときに新しい情報を他のメンバーと共有する
なんか、YouTubeで時々バカにされているハイテンションで朝礼したりするブラック企業を連想させるものもあるが、それってあなたの感想ですよね?リソースを十分に使いたい。それぞれのスタッフに思いっきり活躍して欲しいという気持ちがあれば、心理学なども含めていろいろな取り組みをすると思います。それがマインドコントロールとかブラック企業とかに見られるなら、仕方のないことでそれを恐れてはならないと思います。
この本に書いてあることないこと含めて、チームワークやコミュニケーションを促進して主体性を持ってもらうことにしてきたことは、
1.合宿。お互いを知り、弱みを共有して、誰がどんなことをしてどこに向かうのか考えるきっかけになった。ベトナム式のトップダウンという考えではなく、主体性を持ってもらうためのマネジメントをするということをはっきり伝えた。うまくいかないところもあったが、試合開始のファンファーレにはなったよう。
2.朝礼。朝礼はなくて、ミーティングも前任者や私が「やろう」と言わない限りなかった。そのため、朝ポツポツと来て何か作業し始めて、時間になったら帰っていくというものだった。朝礼で行うのはGood&Newだけ。なかなかGoodを言ってくれなくて、悪いことを報告して口論になること時々あるが、それでも情報共有がない頃と比べて良くなった。プライベートのことでも良いので、お互いの距離感は近づいていると思う。最初の1か月くらいは、輪になるときに大きな輪を作っていたが、今はみんな近づいて立つようになり小さい輪で物理的にも心理的な距離も縮まっていると思う。
3.机の距離を縮めた。人数の割に事務所が広く、今まで好きな場所にポツンポツンと座っていた。事務所は声が響くので、事務所の隅でひそひそ話をしても反対側まで届くような感じだったので、みんな話さなかった。目の前にいる人とかにもチャットで話していた。事務所の半分をミーティングスペースにして、残りの半分に事務所スペースを押し込んだ。この本に書いてある通りに、最も離れていても8m以内になるようにした。
4.事務所やミーティングルームのあちこちにホワイトボードを取り付けたり、壁一面にホワイトボードの壁紙を貼り付けた。掲示板も増やした。
5.他の海外拠点から人が来たときは積極的に話す機会を作るようにしている。私の悪口を言われそうで怖いが、かなり国際的な会社だし、それのためにこの会社を選んでいる人も多いので、そういう機会は多く作りたい。
6.来てもらうだけでなく、いろんな人に海外出張の機会を作りたい。コロナが終わったので、別の海外拠点で研修やミーティングなどが増えてきて、今まではベトナム人スタッフが行くようなことはほぼなかったようだけど、順番に機会を作っている。
7.オープンブックマネジメントを実践。オープンブックマネジメントやグレートゲームオブビジネスの本を参考にしているが、うまくできるものではないので、とりあえず月次のP/LやB/Sを読み解く勉強会を開いている。
8.あちこちに設置したホワイトボードで、ポストイットでタスクとか管理したり見える化。決めたことを忘れてやらないこととかあるし、他の誰が何しているのかわかるように。
効果としては、
1.いままで事務所内で全く会話がないか、ひそひそ話しかしなかったが、会話量が増えた。
2.皆無だったミーティングが、自発的に開催されるようになった。そこに読んでもらえないのは寂しいし不安なときもあるが、自発性を上げるために何も言わない。後でそれとなく内容を聞いたり、ホワイトボードの記録をみたりしている。
3.自分が意識すべき数字が明らかになっているので、取り組みの提案が増えた。その効果も確認できる。
4.英語とか中国語とか、いろいろ勉強する人が増えた。
5.提案や意見を言う人が増えたし、細かいことだと知らないうちに改善して変わっていることが多い。私がいなくても何も言わなくてもルーチンとして回す習慣のようなものができてきた。
こういった効果はありますが、ビジネスの成績に反映していなければ会社としては意味がありません。売り上げという数字で見た場合の効果はまだ全然出ていない。利益の面では改善傾向にある。売上も今まで営業してくるのが基本的に日本人だけだったけど、ベトナム人もローカル企業や外資系企業相手に積極的になっているので、数字に反映できる流れにもっていきたい。
まだやっていないこと、やりたいこと
1.聞きすぎるほど聞く。ベトナム人のコミュニケーションは上から下へ一方通行だし、ミーティングでも演説になることが多いので、傾聴ということを学んでもらいたい。私もワークショップ開いたりできて合宿でもやったが、準備含めて時間がかかるので、まともな研修を探している。
2.AARを導入。After Action Review。要するに反省会。行動しっぱなしが多い。
‐私たちが当初目指していた結果は何か?
‐実際の結果はどうだったか?
‐その結果になった原因は何か?
‐次も繰り返す行動は何か?
‐次は変えた方が良い行動は何か?
3.共通の目標と価値観を持つ。そしてメンバーに期待していることをしつこいくらい伝える。そしてそれをキャッチフレーズやスローガンなどでしつこく伝え、社内に価値観や目的を象徴するような人工物を多く作る。たとえば、ネイビーシールズなら戦士した仲間の身に着けていた装備が展示されている。ピクサーはオスカー像や映画の原案になった手書きのスケッチ。サンアントニオ・スパーズはガラスケースに飾られた岩とハンマー(スパーズのキャッチフレーズは「岩を叩け」。
4.合宿を通して、弱さを共有できるよう話していて居心地が悪くなるようなコミュニケーションをしたが、それをしょっちゅう入れる。
5.会社の歴史やアイデンティティを学ぶ機会とともに、自分のアイデンティティを考える機会を作る。そして会社のロゴだけではなく、自分の名前の入ったユニフォーム(ポロシャツとYシャツですが)をっ渡す。
6.パイロットの間では、「通知(Notification)」と呼ばれているようだが、指示や命令ではなく、自分が気がついたことを相手に伝え、お互いが状況の理解をより深められる機会をルーチンや習慣として取り入れる。
7.主体性で業績を上げているヨソの会社で見た「感謝ボード」みたいなのや、自分の失敗した経験を書き込むホワイトボードを設置
8.現実と理想をつなぐ物語を作る。以下本からの引用。
ステップ1現実的な目標を設定する目標は何でもかまわない。あるスポーツができるようになることでも、間関係を再構築することでも、何キロか痩せることでも、新しい仕事を見つけることでもいい。次に、数分かけて、その目標が実現した未来を想像する。想像できただろうか?
ステップ2現状と目標の間にある障害を思い浮かべるできるだけ具体的に、詳しく想像すること。極度に悲観的になる必要はないが、現実的になる必要はある。たとえば、ダイエットを目標にしたなら、焼きたてのクッキーの匂いを嗅ぎ、つい1枚(または3枚)食べてしまうというのが、現実的に考えられる障害になるだろう。
これだけだ。この目標達成のメリットと障害を想像するテクニックは、「心理対比」と呼ばれている。これは科学というよりも、深夜の通販番組で言っていそうな内容に近いと思うかもしれない。それでもエッティンゲンの実験によると、この方法は効果がある。モチベーションが高まり、行動や態度も実際に変わるというのだ。
9.マネジメントゲームを導入。100期までやってもらう。
この本はベトナム語版もあるので、人事担当者にも読ませている。